建築について
平成の古墳(安藤忠雄氏の代表作のひとつ) |
---|
![]() |
建築設計 安藤忠雄建築研究所(安藤忠雄、水谷孝明、新堀学)大阪府建築部営繕室 |
近つ飛鳥と名付けられた、大阪府南部に位置するこの地域は、日本でも有数の古墳群が存在するところである。ここには4基の天皇陵を筆頭に聖徳太子墓、小野妹子の墓など、二百数十基の古墳群が存在し、日本の歴史の発生期における中心的な場所である。
この建物は、古墳文化の公開、展示、研究を目的としたセンターとなる博物館である。この博物館の構想はこれまでの博物館とは異なっており、単なる出土品を展示するだけの施設ではない。ここでは、新しい試みとして、環境として周辺に点在する古墳群全体をそのまま見せようとしている。そのため建物は、そこから出土地域全体を一望できるようなひとつの丘として考えられた。
建物は窪地に位置しているため、周囲を一望できるように段状に隆起させた。周辺には梅林や生命の源である水をたたえた池があり、風土記の丘の散策路が巡る。この博物館はそうした豊かな自然に包まれる。初春のころには梅林が美しく花を咲かせ、初夏には新緑が、秋には紅葉がこの地域を彩る。このような環境の中でこの建物は野外活動の拠点としても活用され、地域の中核として機能するであろう。屋根は段状の広場となっており、演劇祭、音楽祭、各種のパフォーマンス、レクチャーなど多様な使い方が考えられる。建物内部に入ると暗がりが拡がる。出土品は古墳の中に収められているときと同様な姿で展示され、人びとは古墳内部に入っていくのと同様な感覚を体験できる。それは古代の黄泉の国への旅である。
この建物は日本人が自分たちの歴史に向かい合うべき場として、また、自然を喜び讃える日本人の感性を収めた平成の古墳として建てられる。
安藤忠雄氏による
建築概要
![]() |
![]() ![]() |
建築基本設計 | 平成元年度 |
建築実施設計 | 平成2年度 | ||
建築工事 | 平成3年12月~11月 | ||
建物構造 | 鉄骨鉄筋コンクリート造 地上2階・地下1階 |
||
建築面積 | 3,407.84平方メートル | ||
延べ床面積 | 5,925.20平方メートル | ||
展示面積 | 1,758.64平方メートル | ||
設計 | 安藤 忠雄 | ||
1994年 | 日本芸術大賞 朝日賞 | ||
1996年 | BCS賞(建築業協会賞) | ||
1998年 | 第6回公共建築賞 |